経済成長と共に自律的に
社会課題が解決される社会の実現
サステナビリティ経営
サステナビリティ経営とは
2023年1月に、「企業内容等の開示に関する内閣府令」に基づく「企業内容等の開示に関する留意事項について(開示ガイドライン)」が施行されました。これにより、企業のサステナビリティ情報開示が義務化されるなど、取り組みが加速しています。一方で、サステナビリティ経営は具体的に何を示すのか、本質的にはどのような取り組みが必要なのか等の見解は関係者によって齟齬があります。
GLINは、サステナビリティ経営のためには、①統合思考、②長期的な視点、③ステークホルダー資本主義、の3つの要素が必要だと考えています。
①サステナビリティ経営の根幹である統合思考
- 統合思考とは、「企業が価値創造するうえで利用される財務・非財務の資本の関係性を一つのものとして考えること」
- その過程と成果を報告する媒体が「統合報告書」。統合報告書以外の開示手法(サステナビリティレポート発行等)を用いる場合も、財務・非財務の関係性を表す「統合思考」を導入することを推奨している
- 組織固有の価値創造をするために利用する諸資本を、財務資本、製造資本、知的資本、人的資本、社会・関係資本、自然資本と提示し、資本間の関係性、資本と組織や事業関係性を包括的に考えることを推奨している(IIRC)1
②将来にわたり価値創造を続けるための長期的な視点
- 10年後・20年後の未来を想像し、「そのときにどのような会社でありたいか」を考え、そこから逆算(バックキャスティング)する
- 今年・来年の売上や利益率ではなく、5年後・10年後の企業価値のために取り組むべきことを明確にし、優先順位を付ける必要がある
- 環境保全やステークホルダーとの関係強化などの価値創造にとって必要な諸資本を守る活動は、「出費」ではなく将来に向けた「投資」と捉える
③従来よりも幅広いステークホルダーを考慮したステークホルダー資本主義
- 差し迫った環境課題や、すでに発生している人権侵害などのサステナビリティ課題を受け、あらゆるステークホルダーが企業の変革に対する期待を高めている
- 経済の環境・社会への依存性を理解・認識し、幅広いステークホルダーとの共存を目指す経営が必要である
- 企業が長期的に利益を上げるには、社会から信頼・受容され続けることが必要。企業に対する信頼・受容を、「社会的操業許可」といい、法的な許可証のように明示的ではないが、会社が存続するために大変重要なものである
サステナビリティ戦略による企業価値向上
企業価値は、主に「EBITDAの向上」、「キャッシュの創出」、「マルチプル(資本コスト)改善」がドライバーとなり、これらに関する取り組みを実施することで、企業価値は向上します。サステナビリティ戦略をもとに実施する個々の取り組みは、基本的にサステナビリティの文脈において利用される主流フレームワークの一つ、「ESG (Environmental, Social, Governance)」のいずれかに当てはまる場合が多く、それぞれ価値創造ドライバーに分類されるため、企業価値に寄与します。
実際に、ESGと財務業績は正の相関関係があるという研究結果が多く、ESG課題に注力している企業は、コスト削減、労働者の生産性向上、潜在的リスクの軽減、収益機会の創出を実現しています。また近年ではESGに関する規制が急増していることから、自社の活動が環境・社会に与える影響をより適切に測定・管理している企業の方が、将来のESG関連政策や規制に対し、より強靭になる可能性が高いと言えます。Firede等(2015年)による研究では、約2,200の学術研究を集計した結果、ESG業績と財務業績の関連性について肯定的な結果(正の関連性)があると結論づけた研究は約6割あるのに対し、否定的な結果(負の関連性)があると結論づけたものは1割未満でした。
参照 (2):ESGと財務業績の関係に関する研究
※メタ分析(meta-analyses)と要素カウント法(vote-counting method)の違い:要素カウント法は単純に研究の数を集計し、結論を導く。肯定的な結果を示すもの、否定的な結果を示すもの、または統計的に有意でない結果を示すものをカウントする。一方、メタ分析は複数の独立した研究の結果を統合し、統計的手法を用いて分析する方法です。メタ分析はより包括的で信頼性が高いとされている。
GLINによる支援の流れ
GLINでは、インパクト/ESG投資家としての視点を活かし、ESG目標達成に向けた行動計画策定を通じて、ステークホルダーと株主の双方にとって長期的な価値創造に繋がるサステナビリティ戦略の策定をサポートしています。
サステナビリティ戦略支援では、まず戦略の根幹となる自社のパーパス・ミッション・ビジョンに立ち返った認識合わせと必要に応じた見直しを行います。その後、長期目標・戦略を策定し、それらを実現するための短期目標設定と自社のアセット・サービスの優先順位付けを行います。
以下6-10ヶ月のプロセスに沿って、社内のマネジメントを含む議論やワークショップを実施しながら戦略を策定します。また、サステナビリティ戦略策定支援の一環としてマテリアリティ分析や課題特定を実施するなど、各社の状況や課題意識に応じて、プロセス自体のカスタマイゼーションも可能です。是非、下記のお問い合わせからご相談下さい。
専門家のご紹介
ディレクター
青木 ユリシーズ
国際基督教大学在学中に国連グローバルコンパクト(UNGC)の日中韓会議に日本代表として参画。卒業後、EYのサステナビリティコンサルティング事業立ち上げに携わり、日本のリーディングカンパニー多数のマテリアリティ策定やサステナビリティ戦略、ビジョン策定支援を実施。その後PwCにて人権・サプライチェーンサービスの立ち上げに従事。
2021年よりSpiber Inc.のサステナビリティと長期戦略を統括し、同企業初のインパクトレポートを策定。その後、GLIN Impact Capital参画。国連機関、NGO、金融庁等の政府機関における講師・講演を多数経験。
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- 財務資本の提供者が利用可能な情報を改善し、効率的に伝達するアプローチを確立すること等を目指して、2010年に規制者、投資家、企業、基準設定主体、会計専門家及びNGOにより構成されるIIRC(International Integrated Reporting Council(国際統合報告評議会)が設立された ↩︎