GLIN Impact Capital(本社:東京都港区、共同代表:中村将人、秦雅弘、才木貞治)は、Literatiに出資しました。当社にとって7社目の投資、2社目の米国案件となります。GLIN Impact Capitalは、本出資を通じて、インパクト/ESGについてのバリューアップ(IMM等)や同社の将来的な日本進出等の支援を行い、子どもの読書の質と量を向上させる機会提供や学校運営における教育環境の改善など、教育格差の縮小に向けたインパクト創出をめざします。
■出資の背景
読めても理解できない「機能的非識字」の子どもが増えている
教育格差が招く問題の一つに、読み書きが満足にできない「非識字」や、読むことはできても文章の意味や内容が理解出来ない「機能的非識字」があります。
特にアメリカにおいては、識字率の低さが課題となっています。アメリカ教育省の全米教育統計センター(NCES)によると、アメリカの成人の21%(約4,300万人)が「非識字」「機能的非識字」に分類されています。
日本でも機能的非識字は増加しており、文部科学省はPISA2018の結果を受けて「程よい長さの文章の要旨を特定」したり「部分の関係や要点を理解」することに困難を抱える高校生が有意に増加していると分析しています。1
「子どもの生活力に関する実態調査」(平成27年、(独)国立青少年教育振興機構)では、読書の頻度が多い子どもほど、コミュニケーションスキルや礼儀・マナースキルが高い傾向にあることが示され、読書は社会生活を送る上での能力形成に寄与すると考えられています。
しかし現在、子どもの本離れは年次が上がるほど進み、日本国内の高校生の不読率は長らく40%台から下がっていません。2 原因の1つとして、小中学校時代に読書習慣を身につけられなかったことが挙げられています。3
子どもの能力開発機会の創出をビジネスを通して支援する意義
これらの読解力の不足は社会的構造が生み出すところが大きいにも関わらず、個人の能力形成に格差をもたらし、情報格差や機会格差の一因となっています。
一方で、アメリカや日本においても、学校は授業料と行政や自治体の補助に頼る財務状況にあるため、学校単体の力で児童に対する教育環境を改善するにあたっては資金不足が構造的な課題となっています。持続的な資金を生み出せるビジネスの介入は、こうした教育環境の改善効果を高める可能性があります。
■Literati社の事業について
AIを活用したBook Club事業とFair事業で読書を通じた識字率向上を目指す
創業者のJessica Ewingはスタンフォード大学を卒業後、GoogleのGroup Product Managerとして勤務したのち、小説執筆及び学校のインストラクターを経て、アメリカにおける識字率の低さを改善したいと思い、Literatiを創業しました。
Literatiは、教育格差が生じやすい児童・学生の教育現場において、読み書きの専門家とAIアルゴリズムの両方を活用したオンラインのBook Club事業とオフラインのFair事業を通じて、子どもたちが自分に合った本と出会い、読書の質と量を向上させる機会を提供しています。さらに、学校運営においてもブックフェアの売上の一部を共有することで、教育環境の改善を促進しています。
またこれらの仕組みにより、これまでブックフェアが開催されず本へのアクセスが限られていた地域の学校における読書の機会提供にも貢献することを目指しています。
長期的には、子どもたちの思考能力やコミュニケーション能力が向上し、教育現場における学習効果が高まることで、各個人の人生にわたって影響を与える長期的なアウトカムの創出が期待されます。
アメリカにおける教育書籍市場は年間11.5~30%成長と試算
グローバルにおける子ども・ヤングアダルト向けの出版市場は年間3%成長、そのうち特にアメリカにおける紙の書籍の市場規模は年間11.5%成長、大手ECサイトにおいては年間30.8%成長しています。
このような成長市場において、GLINは出資を通じて、Literati社が実現する読書の質の向上、アクセスの向上を促し、さらなるインパクト創出を支援してまいります。
■GLINのLiterati社に対する支援の方向性
GLIN Impact Capitalは、同社の経営陣、および既存・共同投資家であるFounder’s Fund, General Catalyst, Felicis Venturesなどの強力な株主とも協働しながら、下記の投資先支援を行ってまいります。
- インパクト/ESGについてのバリューアップを通じて同社が持つ事業インパクトの創出と経営戦略への統合を支援。またGLINが持つインパクト測定・マネジメント(IMM)支援のケイパビリティを活用し、今後の事業拡大によるインパクト創出をサポート
- 同社の日本進出についても支援を行い、日本における読書教育および英語教育についての支援、関連分野におけるソーシャルインパクトの拡大を支援
■出資先概要
会社名 :Literati
代表者 :Jessica Ewing (Founder & Chief Executive Officer)
設立 :2017年
資本金 :1億円
所在地 :4509 Freidrich Ln Bldg. 4 Ste 402, Austin, TX 78744, United States
事業内容:小学生向けの本のサブスクリプション及び小学校におけるブックフェアの提供
■GLIN Impact Capitalからの出資を受けてのコメント
Literati CEO Jessica Ewing氏
私たちのミッションは、‘Ignite a Love of Learning and a Love of Life’です。そのために、人間とAIの叡智を組み合わせて、世界規模でのインパクトを実現したいと考えています。
LiteratiにとってGLINはアメリカ国外からの初の投資家であり、初のインパクト投資家でもあります。GLINのチームは、私たちが教育のもたらすアウトカムを改善し、こうしたデータやテクノロジーを活用しながら学ぶことへの楽しさと愛を喚起しようとしていることを理解してくれています。
今後はGLINと緊密に協力しながら、インパクトメジャメント・マネジメント(IMM)のフレームワークを通じてLiteratiがもたらしうるインパクトをより正確に測定し、グローバルレベルでの戦略立案と事業拡大を行っていきたいと思います。
■共同投資家からのコメント
Literati社の取締役でありForbes Midas Listに10年連続で選抜されているFelicis VenturesのAydin Senkut氏からもGLINの参画に対する期待のコメントをいただきました。今後協働してLiterati社を支援してまいります。
Felicis Ventures
Founder and Managing Partner Aydin Senkut氏
GLINインパクトキャピタルとの協力によってLiteratiの影響力とミッションが高まることを楽しみにしています。我々フェリシスがLiteratiに対する投資実行を決定した理由は、「本と読書を通じて学びと人生への愛を確かなものにする」という彼らの不屈の姿勢に感銘を受けたからです。Literatiの革新的なアプローチは、特に不均衡な教育環境において、子どもたちと本との関わり方に変革を起こしつつあります。
GLINの投資については、私自身もLiteratiの理事会メンバーの一人として非常に期待しています。今回の投資によって、本や読書の品質とアクセシビリティをさらに向上させることが可能になるでしょう。Literatiの顧客リーチを拡大し、リソースを改善することで、子どもたちの読み書き能力と教育に対しても長期的な利益をもたらすことを目指しています。私たちは今後も、すべての子どもが一生涯の読書への情熱を育む機会がある、明るい未来を創造することに尽力していきます。
■GLIN Impact Capitalについて
GLIN Impact Capitalは、資本主義の発展と共に自律的に社会課題が解決される「よりサステナブルな資本主義へのアップデート」をミッションに、その実現に有効な手段がインパクト/ESG投資の発展・拡大であると考え、2020年に創業いたしました。
投資活動として、社会的インパクトと経済的リターンを同時実現するスタートアップに対してインパクト/ESG投資を行い、出資先が社会的インパクトと経済的リターンを同時に創出しながら成長していくことができるよう様々なサポートを提供しています。日本が海外諸国に比べて先進して直面している社会課題と対応が遅れている社会課題(環境問題、少子高齢化、多様性社会への課題、農業・食糧問題、メンタルヘルス、教育格差、等)を革新的技術やビジネスモデルで解決するスタートアップが主な投資対象となります。
インパクト/ESG投資を行う国内第一世代のベンチャーキャピタルとして、蓄積した実績・知見の発信や関係先との協業を通じて、日本のインパクト/ESG投資エコシステムの発展に貢献してまいります。
GLIN Impact Capitalホームページ:https://www.glinimpact.com/ja
※本プレスリリースは、情報提供のみを目的としたものであり、投資の勧誘、推奨を目的とするものではありません。
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admin@glinimpact.com
- 文部科学省・国立教育政策研究所(2019)「OECD 生徒の学習到達度調査 2018 年調査(PISA2018)のポイント」
↩︎ - 全国学校図書館協議会「第68回学校読書調査(2023年)」 ↩︎
- 文部科学省「子供の読書活動に関する現状と論点(2017年)」 ↩︎