GLIN Impact Capital、がんの早期検出と即時治療につながる技術を開発する米Earliに出資-がん初期段階で悪性腫瘍を特定し即時治療につながる技術を開発し、世界中のがん患者の生存率向上および治療副作用軽減によるインパクト創出を目指す-

GLIN Impact Capital(本社:東京都港区、共同代表:中村将人、秦雅弘、才木貞治)は、Earli社に出資しました。当社にとって8社目の投資、3社目の米国案件となります。GLIN Impact Capitalは、本出資を通じて、インパクト/ESG観点からのバリューアップや同社の将来的な日本進出支援を行い、世界中のがん患者の生存率向上および治療による副作用軽減に向けたインパクト創出をめざします。

■出資先事業が解決する社会課題

先進国の死因トップ:がん

さまざまな統計資料1において、先進国で最も大きな死因ががん(≒悪性新生物)であるというデータが出ています。2022年においては、全世界で2,000万人が新たにがんに罹患し、970万人近くが亡くなりました。また患者数および死者数の将来予測は増加する一方であり、2050年には年間の新規罹患者は3,500万人に達するという予測もあります。2また日本では、過去30年にわたりがんが死因第1位となっています。今までもこれからも、人類の最大の死因の一つはがんであることが予測されています。3

(がんの新規罹患数と死者数を国別で表した図)

https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.3322/caac.21834

(がんの新規罹患数と死者数をがんの種類別に表した図)

Sources: A Cancer Journal for Clinicians ‘Global cancer statistics 2022: GLOBOCAN estimates of incidence and mortality worldwide for 36 cancers in 185 countries’ (2024/04/04)
 https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.3322/caac.21834

抗がん剤治療による副作用の問題

がんが進行した場合、抗がん剤以外の治療法は限られています。4抗がん剤は重大な副作用が多く、場合によってはアナフィラキシーショックや心不全などの副作用により死亡することもあります。死に至らない副作用であっても、脱毛・抜け毛、嘔吐・悪心、全身倦怠感、味覚障害など患者のウェルビーイングに大きな影響を与える副作用があり、がんによって発生する大きな問題の一つとなっています。5

がんの早期検出が生存率に大きな影響を与える

American Cancer Society Report 2023によれば、様々な種類のがんにおいてStageが遅れれば遅れるほど生存率が低いことがデータで示されています。例えば肺がんであればStage1の患者であれば生存率61%に対して、Stage4の患者は生存率が7%になります。一般的に、がんは進行するとより治りにくく、また治療による体の負担も大きくなりますが、科学的根拠に基づくがん検診を受けることでがんを早い段階で発見し、適切な治療をうけることが可能になると考えられています。6

(がんの進行段階による生存率)

Sources: Centers for Disease Control and Prevention and American Cancer Society, 2021 https://www.color.com/blog/the-true-cost-of-cancer

■Earli社の事業について

がん初期段階で悪性腫瘍を特定する検出技術を開発

Earliは、スタンフォード大学のがん検出研究者であるSam Gambhir博士、2つのスタートアップを成功させたシリアル・アントレプレナーのCyriac Roeding氏、および遺伝子治療の専門家であるDavid Suhy博士によって設立されました。また、ノーベル賞を受賞したがん関連技術研究者であるJim Allison博士を含む、トップクラスのがん研究者や臨床医の12名を世界的なアドバイザリーボードメンバーとして迎え入れています。同社は臨床試験で確認されている高精度な技術を開発しており、早期段階(ステージ1)でがんを検出し、悪性腫瘍やがん細胞の位置を特定することが可能です。この技術により、悪性腫瘍の適時かつ効果的な治療が可能となります。

Earliの技術は、がん細胞を自己破壊へと向かわせる仕組みを備えています。開発された合成特殊配列(a synthetically designed seequence)は、正常細胞や良性病変ではなく、がん細胞内でのみスイッチが入ります。このスイッチが入ると、がん細胞は「小さな工場(“little factory”)」となり、バイオマーカーを生成します。このバイオマーカーは、腫瘍の局在を特定するためのイメージング診断や、腫瘍を攻撃し最終的に破壊するよう免疫系にメッセージを送るサイトカイン(cytokine)の生成に使用することができます。

現在、アメリカで臨床試験の準備が進行中であり、がんの中で最も死亡率が高い肺がんへの適用から開発が進んでいます。

■GLINのEarliに対する支援の方向性

GLIN Impact Capitalは、共同投資家であるAndreessen Horowitz, Khosla Ventures, Menlo Venturesなどの強力な株主とも協働しながら、下記の投資先支援を行ってまいります。

  • インパクト/ESGについてのバリューアップを通じて同社が持つ事業インパクトの創出と経営戦略への統合を支援。またGLINが持つインパクト測定・マネジメント(IMM)支援のケイパビリティを活用し、今後の事業拡大によるインパクト創出をサポート
  • 同社の日本進出についても支援を行い、日本における同技術を活用したがん検出および治療の拡大を支援

■出資先概要

会社名 :Earli

代表者 :Cyriac Roeding (Co-Founder & Chief Executive Officer)

設立 :2018年

所在地 :Redwood City, CA, United States

URL:https://www.earli.com/

■GLIN Impact Capitalからの出資を受けてのコメント

Earli CEO Cyriac Roeding氏

過去30年間、製薬会社は腫瘍細胞の外側に存在する自然なバイオマーカーを見つけ出し、「薬剤標的」にしようと何十億ドルも費やしてきました。しかし、多くのがんは自然なバイオマーカーを持っていないか、特定の患者にしか存在しません。そのため、すべての患者に有効な薬剤は存在しないのが現状です。そこでEarliはこう考えました。「この実体のない探索をやめたらどうなるだろう?がんが存在する時だけスイッチが入り、それ以外では入らないような遺伝子構造をがん細胞内に組み込み、それを利用して任意のタンパク質を生成させることができたら?そのタンパク質を利用して腫瘍を特定したり、免疫系を活性化してがんを攻撃させたりできるのではないか?」これこそが、Earliが取り組んでいることなのです。

Earliの技術は日本にとっても非常に興味深いものだと私たちは考えています。日本は、特に肺がんという最大の死因において、がんの早期発見の最先端を走っています。さらに多くの命を救うための次のステップは、検出を超えてがんの早期診断や即時治療に移行することです。GLINは私たちの最初の日本の投資家であり、道を切り拓くそのリーダーシップに感謝しています。私たちは他の有力な日本のパートナー・投資家とも協力し、がんを自己破壊へと導く未来に向けて歩んでいくことを楽しみにしています。

■GLIN Impact Capitalについて

GLIN Impact Capitalは、資本主義の発展と共に自律的に社会課題が解決される「よりサステナブルな資本主義へのアップデート」をミッションに、その実現に有効な手段がインパクト/ESG投資の発展・拡大であると考え、2020年に創業いたしました。

投資活動として、社会的インパクトと経済的リターンを同時実現するスタートアップに対してインパクト/ESG投資を行い、出資先が社会的インパクトと経済的リターンを同時に創出しながら成長していくことができるよう様々なサポートを提供しています。日本が海外諸国に比べて先進して直面している社会課題と対応が遅れている社会課題(環境問題、少子高齢化、多様性社会への課題、農業・食糧問題、メンタルヘルス、教育格差、等)を革新的技術やビジネスモデルで解決するスタートアップが主な投資対象となります。

インパクト/ESG投資を行う国内第一世代のベンチャーキャピタルとして、蓄積した実績・知見の発信や関係先との協業を通じて、日本のインパクト/ESG投資エコシステムの発展に貢献してまいります。

GLIN Impact Capitalホームページ:https://glinimpact.com/

※本プレスリリースは、情報提供のみを目的としたものであり、投資の勧誘、推奨を目的とするものではありません。

本プレスリリースに関するお問い合わせはこちらadmin@glinimpact.com

  1. https://www.ipss.go.jp/syoushika/tohkei/Popular/P_Detail2024.asp?fname=T05-27.htm ↩︎
  2. https://acsjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.3322/caac.21834 ↩︎
  3. https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202301_00001.html ↩︎
  4. https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001h1mn-att/2r9852000001h1pg.pdf ↩︎
  5. https://www.cancer-support.net/side-effects/ ↩︎
  6. https://ganjoho.jp/public/knowledge/basic/index.html ↩︎